Part 6 :

帰国日

“The Passionate Pilgrim”

 

↑朝のDX勢

↑オリマーとメタナイトを練習する

Nietono & Abadango

 平和な朝。何事も無く目が覚めた。WiiU勢は、この日の夕方:16:00の飛行機で帰る予定であった。今日は吹雪であり、交通機関が麻痺している可能性もあったため、このClarion HotelがNY市街に近いという点は有利に働く。

 まだこちらの部屋が誰も起きていない頃、再びこのドアを叩く者が現れた。日本DX勢である。

 まず、DXの優勝決定が終わったのは深夜2時頃。状況を見るに、そこからこのホテルに帰る術もなく、会場近くの Double Tree Hilton Hotel のロビーで朝までいたようだ。そして今頃ここへ帰ることを達成し、全員慌ただしく帰る準備を始めていた。DX勢は、なんと朝11:00の飛行機で帰国する。

 かなりのスピードで準備をし、DX勢は8:00頃にこのホテルロビーを出た。しかも、無事JFK空港に着いてちゃんと飛行機に乗ったようだ。遠征経験の豊富なチームが、トラブル無くApexを締めてくれた。

 WiiU勢よりも大きな窮地を経験したDX勢。この界隈も、また何かを得て帰り、これからの1年を形作っていくことだろう。

↑朝Subway。

 WiiU勢は、11:00 にホテルを出てタクシーに乗ることにしていた。タクシーも予約した。完全にのんびりするモードになっていた。

 私とTenuheさんは、Subwayに朝ごはんを買いに行った。「全員分買ってくる!」と勇んでホテルを出たが、ロビーのガラスドアを出た途端に、雨が降っていることに気付き引き返したくなった。吹雪警報だったくせに、実際は雨である。雪道が、ニューイングランド地区の冷たい雨でかき氷のようになっており、靴下を濡らしながらもSubwayに辿り着いた。

 フラットブレッド・フットロング・ターキーブレストに、モッツァレラチーズを入れてトーストしてもらい、野菜をガンガンいれてオリーブ多め。これで$5くらい。これが食べたくて、はるばるやってきた。日本のSubwayには、モッツァレラチーズが存在すらせず、どんなに課金しようと願っても手にすることは出来ない。

 ホテルに戻り、全員このSubwayを食べて、荷物をセットしてロビーへ向かった。朝11時。我々はApex2日目にお世話になったタクシーのおっさんの車に乗り、空港へ飛んだ。一人$30である(これは、JFK空港からホテルまでの一人あたりの電車+バス費と大体一緒である)。

 

 タクシーは、かなりのスピードで走ってくれた。平日は通例、郊外とNYを結ぶ高速道路が混んでいる。しかし今回は例外的で、全然混んでいなかった。昨日のApex最中、大雪の警報が出るという予報があったため、休みを取っている会社が多いのだろうか。ハドソン川の地下を行くトンネルも、Part3の時と異なり、完全にガラガラだった。そのため窓の景色を観ていると、あっという間に郊外から市街へ入った。スノーマンから、フォーサイドである。途中トンネルを経ているため、まさにゲームのロード画面のように、綺麗に切り替わった。

 そこからも高速道路を走り、1時間でJFK空港へ到着した。時刻は未だ12:00。最終日に限っては、幸運に恵まれた。

↑TearBear遭遇。

↑空港、到着。

 

 空港に早く着いたので、椅子を7人で占領して座った。そこへ、意外な人物が近寄ってきた。

 TearBearである。スマブラXの頃からおなじみである。Shimitakeさんは既にかなり面識があったようだ。このTearBear、国内線をわずかに乗り過ごしてしまったようで、あと1日待つ羽目になったらしい。誰かに拾ってもらうよう連絡を取っている最中だった。

 日本勢は、空港のスタバなどで飲み物をゲットして、まったりしながら待機していた。

↑買ったもの。

↑空港、ゲート前。

 14:00くらいに出国審査を受け、ゲートの前まで行った。そこで買えるだけのお土産も買った。私は自分へのお土産も買った。まずは英語版『孫子』を見つけたので、それを。そして今年日本勢に人気があったのはアメリカ原産 PLAYBOY で、複数のプレイヤーが購入した。私も2冊、別種類のを買った。自分の場合「エロ本を買うのが恥ずかしいからレジに一緒に真面目な本を持ってきた人」みたいになってしまった。

 ただここからがちょっと問題で、雪が強くなってきたため、飛行機に遅れが生じ始めた。今になって、雨が雪に変わってきたのだ。また、最近もNYにて雪のせいで飛行機が事故る事態が発生した。雪のNYに行っていた時点である程度のリスクを負っていたのだと思うと、生還は十分に幸運である。飛行機の出発は遅れたものの、なんとか日本勢は無事帰国の途につくことが出来た。Shimitakeさんについては、私よりも更に2週間前からアメリカ入りしていたため、久々の帰国である。

 ああ、一週間日本を離れている間に、様々な所で遅れを取ってしまった。滞っている業務もある。帰りなんいざ、田園将に蕪れんとす。胡ぞ帰らざる。

 ANAの機体が、黒い雪の空の中に離陸した。あらゆる困難をもたらした、冬のNY。その街が、窓の外から次第にかすんでゆき、すぐに見えなくなった。


 いつもの旅日記であればここで終わるが、今年はおまけがある。飛行機の中で、映画ベイマックスや半沢直樹・ハピネスチャージプリキュアを見ることが出来た。私は(ベイマックス・半沢直樹・プリキュアは見たことがあったため)そこで敢えてインド版巨人の星『スーラジ・ザ・ライジングスター』を視聴した。

↑伴 宙太に相当するキャラ:

“パップー”

 その登場人物に、パップ―というキャラが現れた。この展開は予想外であった。Apexに行ったら意外にもJakeから「パペピアさん」という話題が出てきたというのに、帰りの飛行機内でパペピアさんの略称名と酷似したキャラが顔を出すのは、ダブルパンチだった。

 おまけは、以上。

 

 ゲームで得られるものは、戦績だけではない。今回の旅は「なにを得られるか」という評価軸から日記を綴ってきた。

 まず戦績も、見落とすべきではない。上位に残ったプレイヤーの結果は、その使用キャラ業界・今後のルールに影響を与え、最もマクロな切り口からメタゲームに関わってくる。当のプレイヤーにとっては、そこからスポンサーから声をかけてもらうことも、今後のプレイへ人生スケールで関係してくることだ。次の遠征に繋がることもある。例えばAbadangoさんは、3月頭のカンヌでの大会(Cannes Winter Clash)に呼ばれている。

 ただ戦績の奥の部分には、1試合1試合で、得られる経験もある。勝負の経験は積んでおいて損は一切無い。異国であれば感性の違いも味わえるし、国内であれば対戦相手からオフ会場・練習相手・ダブルス相方に繋がることもある。対戦以外で出会った相手も見逃してはいけない。「今の時代、ネットでいくらでも繋がれるでしょ?」と思っているかもしれないが、オフ大会とネットでは速さが違う。感情論だが、ネットのみだと、相手を知るためにかかる時間が、直接会う場合と比較して長い。テレプレゼンスという技術が開発を進められている以上、直接プレイヤーと会える素晴らしさは価値があるのは自明なことである。そうして会った人達と、無作為に顔を合わせられることは貴重である。学校や仕事だと部活・専門といった興味から選んだ道が必然的に多くなるため、仲間が偏りがちな中、多方面の所属の人・様々な世代の人と交流できる場は珍しいのではないか。

 この1年で、Part0でも述べたように、スマブラのプレイヤー業界は世界的にも多くを得た。自分個人としても、かなり多くを得た。だから、この日記を読んでいる皆さんにも日本の大会に来て欲しいし、既に大会のある地域(関東・関西など)でも、そんな舞台である「大会」をもっと開いて欲しい。また、国内で・国外へ遠征はして欲しいし、ゲーム業界が今以上に人のつながりの強い・ダイナミズムのある業界であって欲しい。


 ゲームというのは、やっていて誇れるジャンルのはずである。これだけ多くの人が、これだけ本気でやっている業界が他にいくつあるだろうか。匹敵するものを見つけることすら中々困難であろう。だから、やっていることを誇れるゲームタイトルが今後も生き残って欲しいし、新しい人がどんどんそういうゲームをやるようになって欲しい。

↑東京駅

 WiiU日本勢は成田空港に到着した。東京は夜。飛行機の出発は雪で遅れたため、空港についた際は23時になっていた。成田空港からの終電は既に多くが終わっていた。AbadangoさんとDAMUさんは急いで終電へ向かい、集合写真を撮ることは叶わなかった。

 私とShimitakeさん・Tenuheさんは、バスで東京駅行きのバスに乗った。NietonoさんとChocoさんは品川行きである。成田では、飛行機の遅延によって終電がなくなった際、こういうサービスがあるらしい。そのまま帰った。

 バスは高速道路を走り、オフィスビルに深夜も窓が灯る街に帰ってきた。東京では誰も眠らない。ビルとは行かないまでも、どこかの街明かりでスマブラの練習をしている人達がいるのだろう。

 再び、大会で会いましょう。

Apex2015 旅日記 完


文・アユハ

写真は APEX ロゴのついている公式のものを除き、アユハが撮影

 
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