大会1日目

the Livestream

(チームトーナメント)

 

 夜明け。どんよりとした曇り空。北米大陸独特の常緑樹・葉を落とした広葉樹、そして英国由来の芝を重んじる景色。グレーとモスグリーンの混じり合う地平線。ニューイングランドの平原は、その柔らかい空気と相まって、包み込むような広大さをたたえる。そんな扁平な視界に、煉瓦を主とした、臙脂色の、屋根の低い建物がぽつぽつ、飛び石のように転がる。さらにその中に、アクセントとして車が幾つも停まっている。アメリカらしい景色。人工物も景色と良く混じっている。

 朝起きると、まさかのまさか、家主 IE6, Alex がお茶を出してくれた。日本式の緑茶をである。

↑ まさかのお茶

↑ 茶葉毎に沸かすお湯の温度を変えられるポット

 茶碗には、龍の描かれたものや「如意吉祥」と書かれたものもあった。こちらで日本語を勉強している人でも流石に「にょいきっしょう」を読める人は居ないみたいだった。また、この龍は中国のものだと教えてあげた。Ryo がいたので「なんで?」と訊かれたが、「指が5本で、黄色いものは中国の皇帝の証なのだよ。日本のは指が3本。黄色を使っていたのは中国以外には琉球しかない。」と教えてやった。

 

 そして、出発の時間がやってくる。

 日本選手団はかなりダブルスに重きを置いていたので、かなり緊張しているかと思ったが、そうでもなさそうである。

 我々はバスで the Student Center まで行くこととなった。再びあのバスである。大学校内を巡回しているので、タダ。

↑ リンクのコスプレの上にジャケットを着るヨーロッパのDX勢

↑ バス停へ向かう日本勢

そして持参された日本国旗

 国旗を風になびかせ、DX勢も共に、バス停へ。バスは30分に一本しかない。乗り遅れないように、即ち受付に間に合うように、慎重であった。

↑ 行きのバス停

 バスを降りて、会場に到着。他の乗客は、この大量の日本人は何をしに来たのか疑問の表情を浮かべていた。

 一方で、初めて会場を見たプレイヤーは、その大きさに目を見開いていたであろう。

↑ 会場

Rutgers Univ. Student Center

← 内部

登録選手による行列

主催者

Alex Strife

 朝9時過ぎに到着。しかし、既に会場は登録選手でいっぱい。長蛇の列。会場本体はまだ先。見えない。すると、主催者 Alex Strife が我々を見つけてくれて、優先して通してくれた。ありがとうございます。

 会場に着くや、昨年王者を擁するチーム・ジャパンは注目の的。再会を祝う人や、サインをねだる人、握手する人や挨拶する人。様々なプレイヤーが寄ってきた。

 とはいえ、日本勢は勝ちに来たので、まずは腹ごしらえに地下の食べ物コーナーに行くことにした。

↑ Subway で買って

そこで食べる

← ESAM がやって来た

注)「いーさむ」と読む

 結局のSubway。私にとっては、この旅2度目のSubway。今回で大分慣れた。早速ハニーオーツを枯渇させた。なんたる日本勢。

 すると、ESAMがやって来た。単体で突如やってきた。私はお気に入り・一押しの選手がやってきたので、喋って写真を撮った。


「謂うことは特にない。試合で語ろう。」


と謂ってESAMは去った。

 そして階段を上り、会場入りを果たした。入った瞬間に分かるこの勢い。選手達の放つ気。設置されたテレビ達の爆音。実際テレビは60台ほど。しかも、間のない会場でせまい。余計に暑い。流石海外勢。あつい。

 スクリーンは、正面の巨大版と、後ろのプロジェクターで行われる。プロジェクターでこのサイズだと考えると、一体正面スクリーンはいかほどの大きさだったのであろう。因みに、正面は 8WayRun, 後ろのプロジェクタは CLASHTOURNAMENTS による運営。

 会場を歩いていたら、とりあえず様々な人たちに会った。ので、並べて見る。豪華キャスト。

APEX会場

後ろプロジェクタ 

CHIBO がとりしきる

Mr-R, Ayuha, Kuraudo, Leon

DEHF, Ayuha, Havok, Sky

 知らない人のために。とりあえず、私(Ayuha) が着ているのはけいおんTシャツ・けいおんフード・けいおんタオル。

続いて、Mr-R はオランダのマルス。見ての通りイケメン。膝に女性を乗せてフリーでチームやっていた。

Kuraudo はカナダのソニック。SRTに来ていた。結構日本語が出来る。

Leon はフランスのマルス。でかい。静止画で見るとでかいだけだが、実際に動くとどたどたワリオみたいに巨体が走ってくる感触。あとテンションも高くて声がでかい。

DEHF はカルフォルニアのファルコ。APEX2010 の優勝者。黒人で穏やか(テンション高くない。飛んだりしない)。

Havok はMK。カルフォルニア住まい。SRTにも来ていた。

Sky は今回の運営の一人。でかい。写真ではかがんでいるが、2mくらいあるのではないか?あと自称「黒人通訳」(黒人のアクセントが強い人は聞き取りにくいのでネイティブでも通訳が欲しいときがある)。


 そして、以下に会場の様子を並べる。

↑ 大会会場は

同人即売も兼ねている

商品を見るKuraudo →

 このように、日本の大会とは異なり、即売会や他ゲー大会も開かれている。結果として、9BさんはP4Uでも5位入賞してしまった。ご存じかとは思うが、DX, 64 のスマブラも同時進行で開催されており、それらも世界最大の大会となっている。

 


 雰囲気を楽しみつつも、刻一刻と戦いの時は近づいていた。今日はダブルス。チームとも呼ばれる。分からない人のために書いておくと、


・シングルス→タイマン。アイテム無し。

・ダブルス→ 2vs2。アイテム無し。チームに分かれて、生き残ったチームの勝ちとなる。ただし、チームアタックはON。


である。「到着日」の記事で、私がチリの「ねこかつ」(Nekokatsu)とチームを組むことになったということを覚えている方もいるであろう。

 ダブルスは、しょっぱなからトーナメント。予選無し。ダブルエリミネーション。

(※ダブルエリミネーション:敗者側があるトーナメント。1度負けてもまだ敗者側にまわる形式。格ゲーやスマブラはこの形式を取る。サッカーワールドカップとは違うということ。ぐぐることをオススメする。)


 という訳で、予選無しなので、いつ呼ばれるかはわからない。今回はトーナメント表を非表示で大会を進めるため、特に。自分はひたすらチームの出場出番を待っていたのである。Neko とはソファに座っていた。たまに通訳を頼まれ、足を運ぶくらい。

 日本勢は、会場の後ろの隅っこのソファ群でまとまっている。ひたすら、呼ばれる瞬間を待つ。向こうの発音が分かりにくいので、呼ばれたときは通訳の私が一応確認した。


 Keitaro の高い声が、何度も会場に繰り返し響く。他の日本勢で対戦が始まる人もいた。

 そして、暫くして、その時が来た。


「Ayuha Nekokatsu vs Sphere Starlight, you guys are on the livestream」


 ん?と思って確認したが、やはり、私の初戦は配信台であった。

← 大会中、遊戯王で

暇を潰す人たち

 ダブルスの完成度に強い不安があったので、なぜこんなことになったのか分からなかったが、自分の前の試合が終わり配信台に座ると、その理由は明らかになるのである。

 配信場所は、大会会場後方の、プロジェクタ台。Chibo がいる方。周囲は柵で仕切られており、対戦者しか中に入れない。前の対戦が終わり、客が流れていく中、私(Ayuha)・ねこかつ(Nekokatsu)・Sphere・Starlight の4人が柵を越えてテレビの前に揃った。ポートを決めて着席する頃、こちらを観戦する客も集ってきた。

 すると、このときようやく、この対戦の主旨が分かったのである。

「Go, USA !」

という声があちこちから飛んできた。なるほど、こちらは日本とチリ、相手はUSAコンビ。USAが国際チームを倒す図を、配信するつもりだったのである。さすれば会場の士気も上がり、USAの幸先も良い。飛んだ噛ませ犬になってしまった。

 第1試合は、Nekokatsu の大活躍でまさかの勝利。凄かった。動画を見ての通りである。1vs2を見事ひっくり返してくれた。申し訳ない。


 ここまでは、よかったよかった。で済んだ。

 すると、会場はここから豹変し、

「USA・USA・USA・USA !」

が始まる。USAコールである。後ろに取り巻く観客が、一斉にUSAの大合唱を始めたのである。これは初めての経験であった。


 人生やって来たことを考えれば、こんな大声援のなかで踊らされることはなかった。今までどこか違う世界だと思っていたエリアに、この舞台の上に、立たされた感情は、複雑な思いが交錯したが、興奮と闘志に変換された。と、同時に、他の日本勢は今までこの中で戦ってきたのだなあという感心がこみ上げた。

 感心、と言うと上から目線のようで申し訳ないが、自分の認識が甘かったのは確かである。海外で対戦をしたことがない方でこれを読んでいる方も、「日本勢は精神力が弱い」「海外だからと言い訳するな」と一蹴せずに、一度この感覚を味わって欲しい。

 USAの観客に囲まれ、CLASHTOURNAMENTS のスタッフにセットされた舞台は、一種のパワースポットである。発せられる取り巻きの音声は、その音量・内容だけでは決して解析しきれない情報量を持っている。日本でも、自宅のオフ会場と大会会場では雰囲気の違いがあることは察しが付くであろう。このAPEX会場と日本の大会会場の差いうのは、日本の自宅と大会会場の差以上の幅を持っている。この落差は一体何なのか。どこから、この観客のエネルギーが来るのか。それが自分には分からない。ただ、この中でプレイせねばならない。

 他の日本勢は、トーナメント表のもっと高い所へ登り、自ずと観客のボルテージも上がり、その中で戦っていたのだ。その意味を・重みを、自分は動画や語り草の向こうのものとしか認識していなかった。



 結局、勝った。1戦目、まさかの勝利。その後の観客の閑散ぶりは面白いもので、さっさと次の試合のために切り直してしまう。この早変わりも、海外の強みなのかも知れないが。

 WB1, つまり次の試合は DEHF, MEKOS との対戦であった。ここは強かった。しょうがない、とまで謂える。一瞬でも、試合の中でDEHFファルコを自分のファルコで投げ連できたことは良い思い出となった。

 そして裏側。これは勝ちたかったし、Nekokatsu もそう思っていた。ただ、ここで敗れた。相手はPikapika と誰かのペアであった。申し訳ないが覚えていない。ダブルスのトーナメント表がまだ見つかっていないので、見つけたらしっかり調べておく。ただ、Pikapika はシングルでも結果を残したピカチュウであった。

 私はこの日、残りは日本勢の皆さんに希望を託して、会場の通訳をしていた。

APEX公式写真。

アユハの初戦。

(となりのイケメンがねこかつ。)

 結局この日、日本勢は Top 8 止まり(Best 4 には及ばず)となった。即ち、思ったよりも結果が出なかったということである。LB2 で消えた私の語れることでもないが、悔しかった。海外のチームは、なにか違った。

「日本勢はもっと行けたんじゃないのか?」

とピアス(Pierce。配信台でよく実況していた人)にも訊かれた。説教は垂れておいた。ダブルメタ無しであったことや、慣れないステージであること、そしてメインのコンビとは組んでいないこと。本調子でなかったことは確か。この辺を言い返しておいた。

 結局GF(決勝)を飾った Nairo ADHD vs M2K Ally は、長い時間を共に過ごしているコンビ達である。M2K Ally は住んでいる場所は遠いが、Ally が遠征するのでよく会っている。ゲーム発売当初からの仲である。ADHD Nairo は、共にNJに住むご近所である。それでも、ADHD と Nairo のシングルの結果を日本のそれと照らし合わせれば、日本ももっと行けたとは謂えるかもしれない。

 ここはとにかく、戦った日本勢のみなさん、お疲れ様でした。海外の反応を見ても、日本のチームに、海外にはない強さがあったことを、誰もが認めています。私は何も出来ませんでしたが、今後も世界に日本を売っていきましょう。


 この日は日本勢は、Alex, IE, Krista の車に揺られ、GFを見ることなく帰って寝た。優勝結果を知ったのは確か、眠る直前であった。私はこの日は、ソファで贅沢に寝た。

 
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