到着日

the Road to Apex 前半

 

 征戦、という言葉は古来より存在する。私は特に『涼洲詩』がお気に入りで、征戦と言えばそれを思い浮かべる。現代は飛行機に乗れば半日で地球の裏側まで赴くことが出来るがゆえに、あまり遠くに戦いに行くことも、さして情を煽る訳ではない。上古の時代の人間にとっての半日と、現代人にとっての半日というものが同じではない、という議論を残してはいるが。


 この日記は、APEX2013に赴く日本選手団の征戦の轍である。


 前置きを書いておくと、APEX2012は日本の圧勝であった。

http://www.smashboards.com/showthread.php?t=316696

シングルス・ダブルス共に日本の優勝。上位の割合も、日本人の参加人数を鑑みれば圧倒的であった。

 さて、今年の内容と参ろう。

 私(アユハ)の出発は1月9日(水)。 7日(休日)には一人カラオケに行っておいた。GET the WORLD (影山ヒロノブ)を歌っておいた。 まずは8日の夜、スーツケースを曳いて羽田空港へ。日本選手団は、既に10人がアメリカ入りを果たしていた。私は単体でアメリカに渡る。受付などで手続きを確認。完璧。満を持して翌日に備える。羽田空港はのんきにリア充イルミネーションとなっていた。

 その後はとんぼ返りをして、京急蒲田の駅前のマンガ喫茶へ。マンガ喫茶では「はじめの一歩」の続きを主に読んでいた。ただ、Facebook からは顔を背けなかった。なぜか。


 ことは前日に起きていた。私は IE6 というプレイヤーの家に行くはずだったのだが、急遽、前日に、「Vexの家に行け」と指示が出ていた。

 異国に赴くにあたって、前日に行き先を変えられるのは、大なり小なり、精神的にきつい。不安に駆られる。アユハにだけは迎えが来ないのだ。しかも行き先はよりによって、

フィラデルフィア


IE6の家はNJ(ニュージャージー)にある。そこはとても静かな良い州である。しかし、フィラデルフィアは事情が違う。これはペンシルベニア州都。治安は米国内最悪との評判。後に現地の人に訊いたのだが、「アフガンよりも1日の死者率が多い」とのこと。

 そこで、Facebook にて、迎えの確認などをしていた。10時〜12時。30th Street Station のロビーと決まった。ルートは、

羽田空港、朝

JFK空港(NY)

↓ Air Train

Jamaica Station

↓LIRR

Penn Station New York

↓NJ Transit

Trenton transit center

↓SEPTA

30th Street Station (PA)

である。LIRRは、Long Island Rail Road の略。LIRR以降が結構ローカル線。これはいかん。しかし、行かねばならない。飛行機は変えられない。アメリカにはネットカフェは、知らない。よって次の日に来るあーすさん・ふわさんを待つわけにもいかない。

京急蒲田駅・始発

というわけで、朝5時。羽田空港へ向かう。

 財布は3つに分割。カバン・ズボンポケット・内側のズボンのポケットに。ズボンは2枚重ね。カバンを取られても、ポケットからすられても、必ず全滅はしない、というつもりでセットした。さて、空港に入る。

 静まりかえった空港。朝6時。とりあえず搭乗。ここから14時間。飛行機に揺られ、北米大陸へ。


 摩天楼に、バキュン!

 紐育(ニューヨーク)に到着。入国は無事完了。楽勝。ここまでは、アメリカではなかったからだ。(空港のゲートまでは、法的には非アメリカである。)

朝の羽田空港

 自分がまさに上の写真のホームに入ろうとしていたとき、まさにここで、第2の問題が起きた。よく分からぬトランシーバーを付けた、ジーパンのひょろい警備員が現れた。駅のホームはエスカレータの上。すぐそこ。しかし呼び止められた。

 「何処へ行く?」そう訊かれた。呼び止められたのは、空港内地図を見ていた7人ほど。ドイツ人観光客の3人・おそらくアメリカ人の数人・そして私だ。各々が行き先を答えた。私は Jamaica Station。すると、そのトランシーバーマンは残りの連中を、エスカレータに載せてホームに入れた。そして、私だけ出口に案内した。案内に数人が現れた。

 「やばい。」閃光が頭を走った。一人で旅をしていたがゆえに舐められた。気がつけば完全に出口に案内された。出口というか、タダの駐車場である。コーンがおもむろに4つ置かれていた。

「ここで19番シャトルバスに乗れ。Jamaica駅までだから。」と言われた。そんなこと言われても、朝5時。バスが来るわけが無かろう。商業的に効率が悪すぎる。

 しかし、5分後にバスは来た。早すぎる。自分の懐疑が一気に募る。4つのコーンの前に、バスは停まった。バスというか、ただのヴァンだろこれ。という風貌の車だった。

 私は、後ろの客席でなく、前の助手席を開けた。「このバスは何番だ?」と尋ねた。「19番だ。」と運転手は答えた。運転手はミット帽・グラサンのちっこい男。NYに来てからというもの、職員はこの集団しか会っていない。ただ、ここで違和感があった。

(こいつ、アクセントが汚すぎる。空港の職員とは違うのでは。)

「このバスは何処行きだ?」と訊いた。

「お前は何処に行くんだ?」と聞き返された。

相手は答えなかった。やはりこれは怪しいバスと踏んだ。私はスーツケースを固く握り、「すまん、そういえばまだ5時だった。もしかしたら迎えの友達がまだ空港のロビーで待ってるかも知れないから、一旦もどる。」と、お茶を濁して走り去った。

 

Air Train 8th Terminal

 こうして、無事 Air Train に乗り、Jamica駅へ着いた。普通に乗り換えて、上の図のホームへ。LIRRは、地元の人たちが通勤で用いる列車。旅の客は私だけ。

 ここからはローカル線になるため、少し説明することがある。アメリカの電車は、日本とシステムが違う。改札口がないのだ。チケットは窓口(見つけにくい)でも車内の車掌からでも買える。ただ、車掌の方が割高。で、買ったチケットを椅子にくっついてる取手のようなものに挟んで、車掌に見せる。というシステムなのだ。

 でかいスーツケースを抱え、空気に合わない風体。周りはスーツにビジネスマンカバン。東海岸なので、流石ビジネスマンはスリムが多い、とうかがえる。電車はガタゴトうるさい。時に停電が来る。日本と比べれば、それはそれはザル。不満は言わずに、とりあえず Penn Station NY まで電車に揺られた。駅員には所々、チップをはずんだ。その為、快く助けて(まもって)くれた。

Jamaica Station, LIRR

Vinnie の FB に載っていたOtori さんとAnti氏

自分が Penn Sta. で見つけた

Pizza Hut

 で、Penn Station を歩いていると、ピザハットがあった。ふと、出国直前に見た Vinnie のFB の写真を思い出し、安心した。自分は同じルートを通っている。前日に Vinnie が案内した日本人達のルートに沿っている、と確信できた。

 Penn Station で NJ Transit に乗り換えるはずが、少し道を間違え、外に出てしまった。朝7時過ぎ。まだ日が昇っていない。北緯が高いからだろうか。摩天楼は闇にそびえて、ただ影がうつるのみ。白人・黒人問わず、スリムなビジネスマン達が、ニューイングランドの冷たい風をコートに受けて歩いて行く。声のでかい3人が、駅前で新聞を売りさばいている。街臭い空気を吸って、また駅に入った。

 で、NJ Transit の搭乗口を探した。

Penn Sta. 内部

 途中から人混みに警戒し、あまり写真が撮れなかったが、これが Penn Station NY 。NJ Transit はここに線路を引く一路線で、またこいつが厄介なことこの上ない。チケットを買う。自分の目的地に向かう電車が何本後に来るか調べる。そして、到着するまで、何番ホームに来るかわからない。到着の瞬間に、10本ほどあるホームのうち、正しいものへ乗り込む。

 まあ、乗れてしまえば問題はない。私はこの路線に乗り、朝日を拝んだ。30th st. sta. を目指す。


NJ Transit 車内からの朝日

 ちなみに、前日に到着していた日本選手10人は Penn Station からは Megabus に乗ったそうだ。→

Megabus は Apex2013 のスポンサーでもある。そのため、10人も一気に急な予約が出来たらしい。で、私の分は…?


 単純に旅行を考えている方へ:Penn Sta. NY から PA の 30th. Street Sta. へ行くには、

・AMTRAK

・Megabus

・NJ Transit + SEPTA

の3方法があるが、上のふたつは予約が必要。注意。

前日に到着した人たちの様子

 そしてついに、NJ Transit と SEPTA を乗り継ぎ(双方30分に1本しか来ないクソ路線)(そして併せて2時間半乗った)、空港に着いてから6時間の旅が終わりを告げようとしていた。ペンシルベニア州都、フィラデルフィアの中心、30th Street Station に到着。ここもまたでかい!電車は古い車体なくせに、駅はでかいのがアメリカ。いや、日本が電車の性能が良く、駅が狭い、というべきか。


30th Street Station ホーム

30th Street Station 内部

30th Street Station 外観

30th Street Station 内部で

新幹線を讃える看板

駅の書店で Lee Martin という

小説家の書を発見。

Lee Martin といえば ↓

30th Street Sta. の Subway

サブウェイは日本でも注文に手こずるのでここでも苦戦

 さて、随分ゆっくりしたように見えるが、実際そうなのである。ここで2時間待った。約束の10時〜12時。ずっとこの駅をたむろしていた。しかし、誰も来ない。私はコントローラを首から提げて、Carpenters とか the Beatles を歌いながら、ひたすら待った。ここはアメリカはペンシルベニア。治安は、先にも述べたが、最低評価との噂。警官が多い。警護犬もいる(駅の放送で、警察の犬はかみつくから注意とか謂っていた)。

 刻一刻と、時ばかりが流れる。待ちきれずに、駅の電話から、家主 Vex に電話をした。出ない。15分後もう一度かけた。されど出ない。

 もはやこれまで。直接 Vex の家へ行くことにした。タクシーを捕まえた。そして住所を教えた。しかしタクシードライバー、その住所のストリートが分からないという事態。失態。そこでカーナビを起動。しかしその重いカーナビは、ストリートを検索するのに時間がかかる。

 運転手は図々しくも、家主に電話すると謂ってきた。電話させたら、遂に家主 Vex が電話に出た。ここで、私は衝撃の事実を知ることとなる。舞台は、後半へ。

大会本戦にて

Suinoko vs Vex

Vex が右。

 
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