到着日

the Road to Apex 後半

 

 「日本勢はもうここにはいない。」

電話に出た Vex から発せられた言葉に、頭が停止した。タクシーは高速道路を進む。「待て、高速を降りろ。」私は運転手に無理矢理指示をした。そしてVexと話した。

 事情は分かった。日本勢が大勢過ぎたので、既に大会会場近くの Keitaro の家に移動したらしい。そこで Vex は私に Keitaro の電話番号を教えた。


 フィラデルフィアのタクシー内。何も力を持たない私は息が詰まった。そこで、ポケットに手を伸ばした。運転手に停車させ、相手の目を見たまま、ポケットから手を抜いた。5ドル札を握っていた。それを運転手の手に叩き付けた。

「電話をまだ使わせてくれ。」

そう謂って、Keitaro に電話をかけた。

 Keitaro が出た。「日本勢はこっちにいるぜ!厳密には IE6 の家だがな。」とのことだった。「すまない。恩に着る。」そう謂って、私は Keitaro & IE6 の家に、折り返し向かうことにした。というか、もとから IE6 の家に行っておけば良かったのではないか...?

 

 IE6 の家は、New Brunswick, NJ にある。会場のすぐ近く。先程のSEPTAに乗り、NJ Transit に乗って先程の半分くらい進むと、New Brunswick Station に着く。そこからはバスだ。


Keitaro は左の人。

SKTAR主催 や APEX スタッフ

家主 IE6。左。

Internet Explorer 6 の略。

写真はDXでの大会で実況席に上がるIE6。

 「30th Street Station へ引き返してくれ」運転手に謂った。高速に乗り(こっちは$0で乗れる)、駅に着いた。実はこの間に Drexel Univ. を通過した。Chibo-Sempai が卒業したところ。


30th Street station


30分に1本の電車は残酷にも遅延(LATE)を告げる。

 さらばフィラデルフィア。高きビル共を側目に、SEPTA で北上する。またここで1時間。

 さらに、Trenton で NJ Transit に乗り換え。ここから1時間乗る。


 ただし、急がねばならない。前半で、朝8時頃に朝日が昇っていたのを覚えているだろうか?つまり、ここでは日が沈むのも早いはずなのだ。遅くなってはならない。日が沈めば日本人などカモである。とにかく電車が先か夕暮れが先か、そわそわしながら電車に揺られた。ここまで、片時も眠ることは許されない。どこでどうされるか分からなかったからだ。


 そして、遂に New Brunswick へ。のどかな街。おだやかな景色。日はまだ高い。3時頃のことであった。


New Brunswic Station

ホーム↑ と 外観←

 駅もさることながら、街の景色もイングリッシュでグッド。車線以外は、文字通りニューイングランド。地図を見て道を確かめていたら、同世代くらいの白人女性が声をかけてきた。助けてくれた。地元の大学生らしい。

 

 そしてバス停へ。この New Brunswick 一帯は、全て Rutgers Univ. が占めており、この写真に写っている建物も全て大学。バスも、大学巡回バスなので、タダ。

 しかし、なんかバス停によく分からぬ広告があった。「influential」下には日本語で「有力な」とある。「影響力ある」の方が良いのでは?とりあえず突っ込まなかった。

 待っている間に、バス停横の屋台的なもので一つ注文をばした。味は普通だった。

 めしを食べていたら、バスは来た。赤い車体にRの文字。なんかどことなく怪しい。とりあえず乗って、大きなスーツケースを不自然に抱えて、バス内部では他のお客にすみません、と頭を下げながら席に着いた。わりと空いている。それがやはり、アメリカの乗り物の良い所だとつくづく感じた。

 すると次の駅で、一団が乗ってきた。研究室のようで、教授らしいおっさんと、学生達。その中で一人アジア人がおり、私の隣に座った。そして教授っぽいおっさんと英語で会話をしていたが、どうもこのアジア人の発音が気になるので、尋ねた。

「どこから来たのですか?(Where are you from ?)」

相手はこう答えた:「Japan」

 私は予想が当たり、計算通り、といった顔をした。「ホントですか?私も日本からです!」ここまで、セリフは全て翻訳してお送りしてきたが、ここは日本語で話した。

 色々会話をして、なぜここに至ったのか尋ねた。私はスマブラのためだと答えた。ちなみに近くにいた教員も、週末スマブラの大会があることなど知らなかった。逆に、相手の日本人は研究のためであった。しかも、訊いてみれば東大の博士課程ではないか!先輩!なんたる偶然!

頂いた名刺

 しかも所属が情報理工。よりによって自分が将来行くことになりそうな所ではないか。 名刺を交換し、私は降りるべき駅で降りた。

 バス停を降りて、てくてく歩くと、すぐそこに生徒の寮があった。その一帯が、今回の大会のための海外プレイヤー受け入れ先になっていた。大量の選手が待っている。


 Keitaro が鍵を開けてくれて、私は中に入れた。Keitaro ありがとう。ついに日本人と合流。安堵。圧倒的安堵。朝5時、空港に着いてから10時間以上。一歩間違えればどこかで死んでいた。部屋に入ったら、9Bさんがプレイしていたところが最初に見えた。

 

 様々なプレイヤーと会った。久闊を叙した連中も多い。

Keitaro をはじめ、

ZeRo (チリの若僧。テンション高い。),

Ryo(全米アイク1位。でかい黒人だった。),

KingToon(かなり強いTリンク。MJGと肩を並べる。静かな黒人。),

Armada(スウェーデンから来た、無敵DXプレイヤー。2013年時点でまだ19歳。),

quiKsilver(ドイツのZSS。SRT以来。),

Mr-R(オランダのマルス。黒髪の白人。),

Leon(フランスのマルス。でかい白人…),

M2K(有名人),

Vinnie(いい人)



 特にZeRoに会えたのが嬉しかった。こいつとだけはずっとコンタクトを取っていたから。全然頼もしくないが、情というのは時と共にうつるものである。

 そして Armada と ZeRo と3人でちょっと喋った内容が心に残った。Armada はXでも強かったらしい。Genesis 1 ではシークで17位とのこと。そこでArmada が謂ったのは、


“ Brawl in the US is so dumb. There’re many players who can’t defeat MK, and they just say to ban them. Only those who can’t beat MKs claims to. And as a result, they banned it in doubles. ”

(アメリカのX業界はアホだ。メタナイトに勝てないプレイヤーが居て、そいつらだけがメタ禁止しろと言いまくっている。そして結果としてダブルスでは禁止になった。)


 確かに、M2K や Anti, Nairo がMK禁止にした方が良い、と謂うのならば納得いくが、Apex 運営にはMK使いもおらず(例えばAlex Strifeはマルス・Vinnie はアイクラ・Keitaro はファルコ)、それでいて結局禁止にしてしまった。

 そんなゲームが嫌ならば、ArmadaみたいにDXに行けばいい、そう思えた。日本ではメタナイトに文句は謂うけれど、禁止ということには結びつかない。そこは国民性の違いなのであろうか。



 そしてこの日最後に起きたこと。ZeRoが、「チーム出ろ!」と言い出した。そしてZeRoのお友達と組むことになった。


 

Nekokatsu (ねこかつ)

 ねこかつ…。なまえはさておき、チリのゲッチ使い。強い。普通に日本でもNo1 ゲッチになれる。そしてイケメン。圧倒的イケメン。FB見たらバンドやってた。

 こうして、日本にいる皆さんには伝えずに、ダブルスの出場が決定してしまった。

 
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